積立投資に為替ヘッジは必要か-米国株式への長期投資は為替ヘッジが無い方が良い | ニッセイ基礎研究所
2|為替ヘッジコストは投資期間が長いほど大きくなる
過去実績では、たしかに為替ヘッジコストの変動リスクは為替変動リスクよりも小さい(図表3)。しかし、為替ヘッジのリターンは、集計期間を長くするほどマイナス幅が大きくなる。円は長期的な低金利下にあり、ヘッジコストが積み重なったからだ。集計期間はデータの制約により20年までとしているが、投資期間を長くすれば、ヘッジコストのマイナス幅はさらに大きくなる。ドルに対するヘッジコストは期間が5年長くなるごとに約12%増加しており、30年投資するのであれば48%、40年投資するのであれば60%が、ドル建てリターンから引かれると概算できる。ユーロに対するヘッジコストは、2015年以降、継続的に0%前後を推移している影響から、ドルに対するヘッジコストよりもマイナス幅は小さい。
2――為替ヘッジと積立投資のリスク軽減効果
1|投資時期を分散する積立投資でも為替リスク軽減効果はある
20代、30代が資産形成をする場合、一般的には、ある程度貯蓄してから投資を始める「一括投資」か、定期的に同じ資産に投資する「積立投資」か、どちらかを選択することになるだろう。同じ資産に同じ期間だけ投資するのであれば、期待リターンは積立投資の方が低いが、積立投資は購入時の価格が平均化されるため、期待リターンから大きく乖離するリスクも一括積立と比べて低くなることが知られている。
過去の実績から、10年間、外国株式指数に一括投資、積立投資をした場合の期待リターン、リスク、リスク調整済みリターン(期待リターン÷リスク)を示す(図表4)。外国株式指数は、米国株式にはS&P500、欧州株式にはSTOXX、先進国株式にはMSCIコクサイ、新興国市場にはMSCI Emerging Markets(以下、MSCI EM)を使用した。いずれも、円建て、為替ヘッジ無、データの制約により配当なしの指数を用いた。期待リターンは、データ期間(2004年12月~2020年10月)中の、投資期間10年を確保できる期間の各リターンの平均値とし、リスクは、それら各リターンの標準偏差とした。一括投資の各リターンはある月から10年間保有し続けた最終資産額の元本に対する増加率、積立投資の各リターンはある月から10年間毎月一定額を同一資産に積み立てた最終資産額の積立総額に対する増加率とした。
図表4から、どの指数でも、積立投資は一括投資と比べてリスクは低い。例えば、一括投資のリスクに対する積立投資のリスクの割合は、S&P500では16%、STOXXでは30%、MSCIコクサイでは21%、MSCI EMでは33%だ。期待リターンも同様に、積立投資の方が低いが、リスクの差ほどではない。結果として、リスク調整済みリターンは積立投資の方が高い。指数別では、期待リターン、リスク、リスク調整済みリターンのそれぞれが、S&P500、MSCIコクサイ、STOXX、MSCI EMの順に小さくなる。
2|米国株式への投資には為替ヘッジはつけなくてもよいだろう
過去実績をもとに、積立投資で為替ヘッジは必要だったかを評価する。為替ヘッジ無と同様、為替ヘッジ有においても、2004年12月~2020年10月までのヘッジコストを考慮した各指数のヘッジ有指数から、投資期間10年を確保できる期間の各リターンを、一括投資、積立投資それぞれについて算出する。
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